こんにちは。Simploop開発チームです。
「AIツールを契約したのに、現場ではあまり使われていない」「システムを入れたのに、結局Excelと手作業が残っている」。こうした声は、業種や規模を問わずよく耳にします。
ツールそのものに問題があるとは限りません。多くの場合、つまずくのは実際の業務にどう組み込むかという部分です。その役割を担う職種として、いま注目されているのが「FDE(Forward Deployed Engineer)」です。
この記事では、FDEとはどのような職種なのか、なぜ注目されているのかを整理します。そのうえで、私たちSimploopがFDEとして取り組む「組織の最適化」について紹介します。
1. FDEとは何か
顧客の現場に入り込むエンジニア
FDEは、直訳すると「前線に配置されたエンジニア」です。自社のオフィスで製品を作るのではなく、顧客の現場に入り込み、ソフトウェアを実際の業務で動く状態にすることを仕事とします。
この職種は、データ分析基盤を提供するPalantirで2010年代前半に生まれたとされています。同社は上場時の届出書類でも、FDEが顧客とともに新しい活用場面を見つけることを、事業拡大を左右する要素の一つに挙げています。FDEの成り立ちの解説(The Pragmatic Engineer)、Palantirの上場届出書類(Form S-1)
既存の職種との違い
FDEは、いくつかの職種の要素をあわせ持っています。違いを整理すると、次のようになります。
- プロダクトエンジニア: 多くの顧客に共通して使われる製品を、自社で開発します。
- 受託開発のエンジニア: 決められた要件をもとに、システムを設計・開発します。
- コンサルタント: 課題を分析し、改善の方針を提案します。実装は別の担当になることもあります。
- FDE: 顧客の現場で課題を見つけ、自ら手を動かして解決策を作り、業務で使われるところまで伴走します。
要件が決まってから作るのではなく、何を作るべきかを現場で一緒に見つけるところから始める。この点が、FDEの大きな特徴です。
2. なぜ今、FDEが注目されているのか
AI導入の課題は「使いこなす」段階に移った
生成AIの性能は急速に向上し、多くの企業が利用を始めています。一方で、試験的な導入から実際の業務での活用に進めずにいる企業も少なくありません。
AIを業務に組み込むには、社内のデータや既存のシステムとつなぐ必要があります。さらに、誰がどの場面で使うのか、結果を誰が確認するのかといった、業務の流れそのものの見直しも欠かせません。ここは、製品を提供するだけでは解決しにくい領域です。
AI企業もFDEの体制を強化している
2026年には、AI企業によるFDE体制の強化が相次ぎました。
Anthropicは5月4日、Blackstone、Hellman & Friedman、Goldman Sachsとともに、新たなAIサービス会社の設立を発表しました。中堅企業を対象に、Claudeを重要な業務へ組み込む支援を行うとしています。発表では、少人数のチームが顧客と密接に協力し、Claudeが最も効果を発揮できる業務を見極めるところから始める進め方が紹介されています。Anthropicの発表
OpenAIも、FDEを中心とした企業向けの導入支援会社を立ち上げ、AIコンサルティング企業の買収によって約150人のFDEと導入支援の専門家を迎え入れたと報じられています。The Pragmatic Engineerの解説
最先端のAIを開発する企業ほど、現場に人を送り込む体制を整えている。この動きは、AIの価値が「導入した瞬間」ではなく「業務で使われ続けること」で生まれることを示しているといえます。
職種名よりも、働き方として捉える
FDEという呼び方は企業によって異なり、「Applied AI Engineer」や「Deployment Engineer」などの名称も使われています。また、FDEの仕事はコンサルタントやシステムインテグレーターに近づいている、という指摘もあります。
大切なのは肩書きではありません。現場に入り、課題を見つけ、作り、定着させる。この一連の働き方こそが、FDEの本質だと私たちは考えています。
3. SimploopがFDEとして取り組む「組織の最適化」
ツール導入ではなく、仕事の流れを整える
私たちSimploopも、FDEとしてお客様の現場に入り、組織の最適化に取り組みます。
ここでいう組織の最適化とは、新しいツールを導入することだけを指すのではありません。仕事の流れ、役割の分担、情報の置き場所を見直し、少ない負担で成果が出る状態に整えることです。ITやAIは、そのための手段の一つです。
例えば、次のような課題が対象になります。
- 同じ情報を複数のシステムやExcelに何度も入力している
- 特定の担当者しか分からない業務があり、休むと仕事が止まる
- 部署間の受け渡しで、確認待ちや認識のずれが起きている
- AIツールを契約したものの、使う場面が決まっていない
現場に入るから見えること
業務の課題は、会議室でのヒアリングだけでは見えにくいものです。担当者自身が当たり前と感じている作業や、例外的な対応として処理している手順の中に、改善の余地が隠れていることがあります。
FDEとして現場に入ることで、実際の画面や書類、やり取りの流れを確認しながら課題を特定できます。そして、提案書を渡して終わるのではなく、私たち自身が改善の仕組みを作り、現場で試します。
自社サービスの開発で得た経験を活かす
私たちは、40歳以上の方のための出会いと交流のサービス「トモリエ」を、AIとともに開発・運営しています。その中で、仕様や判断の根拠を人とAIが参照できる形で残し、守るべきルールを検査できる仕組みに変える取り組みを続けてきました。トモリエのハーネスエンジニアリング実践
この考え方は、組織の業務改善にも応用できます。ルールを決めるだけでなく、守られているかを確かめられる形にする。判断の理由を残し、担当者が変わっても同じ基準で仕事ができるようにする。AIを使う組織にも、使わない組織にも役立つ考え方です。
4. FDEとしての進め方
私たちは、次のような流れでお客様と取り組みを進めます。
ステップ1 無料相談で課題を整理する
「何から始めればよいか分からない」という段階からご相談いただけます。現在困っていること、理想とする状態、使っているツールなどをお聞きし、取り組む範囲を一緒に決めます。
ステップ2 現場で業務の流れを確認する
実際の業務を担当者の方と一緒に確認し、時間がかかっている作業や、情報の流れが滞っている箇所を特定します。改善の効果が大きく、小さく始められる対象から優先順位をつけます。
ステップ3 小さく作って、業務で試す
既存のツールの設定変更、AIを使った作業の自動化、簡単な業務アプリの作成など、課題に合った方法で改善策を形にします。一度に大きく変えるのではなく、実際の業務で使いながら調整していきます。
ステップ4 仕組みとして定着させ、引き継ぐ
改善策が使われ続けるよう、手順書や運用ルールを整え、担当者の方への説明を行います。私たちが関わらなくても回る状態を目指し、必要に応じて継続的な改善もサポートします。
FDEによる支援で、できないこと
FDEによる支援は、外部に業務を丸投げする方法ではありません。現場の業務を最もよく知っているのは、お客様自身です。担当者の方に時間を割いていただき、一緒に考えることで、はじめて現場に合った改善ができます。
また、すべての課題がシステムやAIで解決できるわけではありません。場合によっては、ツールを増やさず、役割分担や会議の進め方を見直すことを提案することもあります。
5. 現場から組織を変えたい方へ
FDEは、技術と現場をつなぐ職種です。AIやITの進歩が速い今だからこそ、それを自社の業務にどう落とし込むかが、成果を分けるポイントになります。
私たちSimploopは、FDEとしてお客様の現場に入り、業務の流れと組織のあり方を一緒に見直します。「AIを導入したけれど活用できていない」「業務が特定の人に集中している」「何から手をつければよいか分からない」。そのような段階から、お気軽にご相談ください。
この記事は2026年10月31日時点で確認した公開情報をもとにしています。各社の取り組みや体制については、リンク先の最新情報をご確認ください。